文庫本で673円というのは、この分厚さと読み応えを考えるとかなり良心的な価格だと感じた。手に取った時の厚みに一瞬ひるんだが、読み始めると構成の巧みさに引き込まれて、思ったより早く読み終えてしまった。

物語は三部構成になっており、同じ出来事を異なる語り手の視点から描き直していく手法が特徴的だ。一部を読み終えた時点では「よくあるホラーかな」という印象だったが、二部、三部と進むにつれて見えていた景色が一変する。この構成の妙こそが、評価4.5という高い数字に繋がっているのだろうと、読後に納得した。

レビュー件数が2816件という多さにも頷ける。SNSなどで話題になりやすい「読む前と読んだ後で印象が変わる」タイプの作品で、人に勧めたくなる気持ちがよく分かる。実際、自分も読み終えてすぐ友人に内容を話したくなったが、ネタバレを避けようとすると途端に説明が難しくなるという、ある種のもどかしさも味わった。

ホラーとしての怖さは、いわゆる驚かせる系の演出よりも、じわじわと日常に入り込んでくる得体の知れなさが主体になっている。民俗学的な要素や家族という身近なテーマが絡んでくるため、読んでいる最中にふと自分の生活と重ね合わせてしまう瞬間があり、それが一番こたえた。派手な恐怖演出を期待すると少し肩透かしかもしれないが、じわじわとした不安を味わいたい人には向いていると思う。

比嘉姉妹シリーズとして続きがあることを知り、この一冊だけで満足せず続けて読みたくなった。価格以上の読後感を得られた一冊として、素直に評価の高さに納得できる内容だった。