535円という価格を最初に見たとき、正直なところ期待値はそれほど高くなかった。文庫本としては標準的な値段だが、これほど長く読み継がれている作品がこの価格で手に入るというのは、むしろ少し拍子抜けするくらいだった。しかし読み始めてすぐ、その油断は消えた。
物語の構成が巧みで、ホラーというジャンルでありながら前半はむしろミステリーとしての緊張感で読ませる。貞子という存在が持つ恐怖は、映像作品であらかじめ知っていたつもりだったが、原作では心理的な追い詰められ方がまるで違う。呪いのビデオというガジェット自体の不気味さよりも、それを論理的に解明しようとする主人公の過程が、じわじわと読者の足元を崩していく感覚がある。
842件というレビュー数の多さは、作品の息の長さを物語っているように思う。評価4.5という数字も、単なる話題性だけでなく、文章そのものの完成度が評価され続けている結果だろう。実際に読んでみると、鈴木光司氏の筆致は過剰な恐怖描写に頼らず、淡々とした描写の積み重ねで読者の想像力を刺激してくる。これは安易なホラーにはない技巧だと感じた。
ページ数はそれなりにあるが、一度読み始めると区切りをつけにくい。夜に読むと確実に眠れなくなるタイプの作品で、通勤電車の中で読んでいたにもかかわらず、家に帰ってからもページをめくる手が止まらなかった。
535円でこれだけの読書体験ができるのは、コストパフォーマンスとして十分に納得できる。映画やドラマで内容を知っている人でも、原作の持つ独特の緊張感は一読の価値があると感じた一冊だった。
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