佐藤という名字を持つ人間が次々と狩られていく——というこの設定だけは、読む前からずっと頭に残っていた。実際に手に取ってみると、評価3.1という数字が示す通り、好みがはっきり分かれる作品だというのが読み終えての率直な感想だ。
文章は非常に平易で、特別な読解力を要求されない。一気に読み進められる軽さがあり、電車の中や寝る前の数十分でどんどんページが進んでいく感覚は確かにあった。659円という価格を考えれば、気軽に手に取れる一冊としての間口の広さは認めたい。
ただ、ホラーとしての「怖さ」を期待して読むと、肩透かしを食らう部分がある。恐怖の演出よりも、追われる側の心理描写や展開のスピード感に重きが置かれている印象で、じっとりとした恐怖よりもアクション映画のような疾走感に近い。586件というレビュー数の多さは、それだけ賛否が分かれつつも多くの人が手を伸ばしてきた証拠でもあるのだろう。文章の粗さや設定の強引さを指摘する声があるのも頷けるし、自分自身、細部の説得力よりも勢いで押し切っている部分が気になった場面はあった。
一方で、発表当時の話題性や、この手のデスゲーム的な設定の先駆け的存在として読むと、また違った見え方もしてくる。後発の作品群と比較してしまうとどうしても見劣りする部分はあるが、当時これを読んで衝撃を受けた読者が多かったことは想像に難くない。
結論として、重厚な恐怖小説を求める人には物足りなさが残るかもしれないが、暇つぶしに読める軽いサバイバルストーリーとして割り切れば、価格相応以上の時間つぶしにはなる一冊だと感じた。
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