574円という価格を聞いて、最初は正直なところ期待値を下げて読み始めた。けれど読了後、この値段でこの読後感を得られることに驚かされた一冊だった。
「新耳袋」シリーズも第九夜まで来ると、著者である木原浩勝氏と中山市朗氏の語り口にはすっかり馴染みが出てきて、一つひとつの話が短いながらも、妙にリアルな実話怪談としての質感を保っている。派手な脅かしや作り込まれたストーリー展開を求める読者には物足りなく感じる部分もあるかもしれないが、むしろそこが本作の持ち味だと思う。淡々とした筆致で語られる体験談は、読んでいる最中よりも読み終えてからじわじわと効いてくるタイプの怖さで、夜、ふと静かな部屋で一人になった時に思い出してしまうような、そんな後味の悪さ(良い意味で)が残る。
評価4.6というのはレビュー件数58件という規模を考えても信頼できる数字だと感じる。実際、収録されている話の中には当たり外れがあるのは事実で、強く印象に残る話もあれば、正直流してしまう話もある。それでも全体を通して読むと、シリーズならではの「積み重ね」のようなものを感じられ、第九夜という中盤から後半にかけての巻だからこそ味わえる、シリーズを追ってきた読者への手応えもあるように思う。
一話一話が短いため、通勤電車の中や寝る前の少しの時間でも読み進めやすい。ただし、寝る前に読むと若干後悔することもある。これは実話怪談というジャンルの宿命のようなものだろう。
価格面では文庫本一冊分の値段としては標準的かやや安いくらいで、コストパフォーマンスは悪くない。怖い話を気軽に、かつ質を落とさずに楽しみたいという人には十分におすすめできる内容だった。
コメント(0)
まだコメントはありません。最初のコメントを投稿してみませんか?