乙一の「GOTH」を合本版で読んだ。もともと分冊で出ていたものがまとめて一冊になっているので、物語を途切れさせずに読めるのは大きい。1,089円という価格も、三冊分の内容を考えると割高感はなく、むしろお得に感じる人が多いのではないかと思う。
内容については多くを語ると未読の人の楽しみを奪ってしまうので控えるが、淡々とした文体でありながら、その奥に潜む不穏さがじわじわと効いてくるタイプの作品だ。派手な描写で怖がらせるのではなく、登場人物たちの心理や行動の歪みを静かに提示していく構成で、読後にじんわりと不快感というか、落ち着かない気分が残る。ホラーといっても叫び声やお化けが出てくるわけではなく、人間そのものの怖さを突いてくる作品なので、その手のテイストが好きな人には刺さると思う。
評価4.4というのは145件のレビューを踏まえると、かなり高い支持を受けている作品だと感じる。実際に読んでみて、その評価に納得できる部分が多かった。各話が独立した短編として読めつつも、全体を通して一本の線でつながっていく構成になっており、最後まで読むと冒頭の印象が変わる仕掛けが用意されている。このあたりの構成力は乙一らしい巧みさだと思う。
合本版だからこそ、一話ずつの余韽を味わいながらも、次の話へすぐに進めるのが読んでいて心地よかった。分冊で買うより通して読める分、物語の繋がりを意識しやすく、伏線の張り方にも気づきやすくなっている気がする。
価格・評価・レビュー件数のバランスを見ても、コストパフォーマンスは悪くない。ホラー小説初心者にもすすめやすいが、人間の闇を描く系統が苦手な人は少し注意した方がいいかもしれない。読み終えた後、しばらく本を閉じたまま黎然としてしまうような、そんな一冊だった。
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